効果ある育毛剤を探しているけど、通販の育毛剤は高いし、何かうさんくさい・・。
まだ育毛初心者だし、とりあえずは近所のドラッグでも買える市販の育毛剤を探してる。
できれば安くて効果ある育毛剤が欲しい・・。
そんな男女のために、元製薬会社社員のくせに10年以上もインチキ育毛剤にダマされてきた失敗経験豊富(?)な僕が、失敗しない「効果ある」市販の育毛剤を紹介します。
育毛剤はまずは市販品から使うのが正解!
育毛剤には、
- 「ドラッグ」で買えるもの
- 「通販」でしか買えないもの
- 「病院」で処方されるもの
の3種類がありますが、「育毛剤を試してみよう!」という”初心者”の人がまず手に取るべきは、1「ドラッグ」でも買える一般的な育毛剤でしょう。
それは、①近所のドラッグでも買える「手軽さ」もありますが、それ以上に、②ドラッグで売っている市販の育毛剤はより多くの人に使われてきてるので、それだけ効果や安全性の点で、まあ、無難だからです。
また、ドラッグでも見つかる育毛剤は花王や資生堂といった③大企業のものが多いのも安心だし、それに、④大量に作っているので、お値段も比較的安い!
まさに初心者向きです。
通販品は上級編?
ちなみに、Amazonや楽天、自社サイトを通じたネット通販でしか取り扱っていない育毛剤もあります。
これは、ドラッグなどに商品を置いてもらうための営業力のない、小さなメーカーの育毛剤である場合が多いです。
そのため、育毛剤の質も玉石混交(ぎょくせきこんこう)。
市販品にはない新しい成分、海外で流行っている成分をいち早く取り入れた「お宝」的な育毛剤もあれば、何の効果検証もしていないインチキ育毛剤もあります。
そういう意味では、これから流行(はや)る育毛剤の「卵」が見つかる場合もあれば、インチキ育毛剤をつかまされて何十万円もお金をドブに捨てるような羽目に落ちることもありえます(僕です・・)
ですので、通販の育毛剤は、「一通り市販の育毛剤を試したけれど効果がなかった・・・」人が次に試す類(たぐい)のものと言えるでしょう。
市販品育毛剤のおすすめ基準
とは言え、どの育毛剤を選んだらいいのか分かりませんよね。だからと言って口コミレビューとかランキングなんて信用しちゃダメですよ!!!
おすすめ基準はあくまで成分の効果証明度
皆さんの(僕も)好きな使った人の口コミや人気ランキングですが、育毛剤では、こんなものを基準に選んではダメです。ステマサイトのでっち上げた「作り話」、「ウソ」の可能性が高いです。
では何を基準にするのか?
「使われている成分がどれだけ効果の証明されたものなのか?」これだけで判断してください。
当たり前の事なんですが、世の中には効果の証明が"ゆるい"育毛剤が山ほどあります。
とりあえず「医薬部外品成分入れとけばいいや!」みたいなのも多いですので注意してくださいね。
-
育毛剤は「発毛剤」、「医薬品」の方が効果ある?
「発毛剤」とか「育毛剤」、「養毛剤」、それに「医薬品」や「医薬部外品」など色々な分類がありますが、どう違くて、結局どれを選んだらいいのでしょうか? 私が20件以上の薄毛治療専門病院で医師に聞いてきたこ ...
ですよね。
でも、それ、実は偉いお医者さんがもうやってくれてるんです。
おすすめ基準は日本皮膚科学会の診療ガイドライン
日本皮膚科学会は、男性型脱毛症、女性型脱毛症の診療のガイドラインを医師向けに発表しています。
日本皮膚科学会男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
ちなみに、「脱毛症」というと円形脱毛症のようなものをイメージしがちですが、僕たちがよく経験している毛が細く短くなったり、抜け毛が増えたりする症状はみな、医学的には「脱毛症」です。
なので、脱毛症の診療ガイドラインとは、薄毛治療のガイドラインのことになります。
ガイドラインでは、医療用医薬品や外科的な手術など様々な薄毛治療の選択肢に対し、効果や安全性の証明度に応じて、「強く勧める」~「行うべきではない」といった推奨度を決めており、その中では市販の育毛剤にも言及しています。
そこで、おすすめ度で上位3つに選ばれていた育毛剤を紹介します。
市販の育毛剤おすすめベスト3
おすすめ第1位:ミノキシジル
日本皮膚科学会のガイドラインで最も推奨度の高い推奨度Aを獲得している育毛剤が一つだけあります。それがミノキシジルです。
「ミノキシジル外用の発毛効果に関して,高い水準の根拠があるので,男性型脱毛症に 5%ミノキシジル,また女性型脱毛症に 1%ミノキシジルを外用するよう強く勧める」
といった具合に「強く勧める」とされているのはミノキシジルだけです。
病院で薄毛治療をする時にも処方されるほど効果・安全性の高さを認められています。
男性でのミノキシジルの効果
ミノキシジルは大正製薬がリアップとして最初に製品化しましたが、その承認を受けた際の臨床試験結果を紹介します。
使い始めて12週間(3か月)後になると急に改善した人の割合が増えて、6割近くの人に薄毛改善が見られます。
20週間後(5か月後)には9割の人に何らかの効果が表れ、1年後に効果が最大になります。
女性でのミノキシジルの効果
20歳以上の壮年性脱毛症患者123人に処方した所、プラセボ*を使った人たちと比べて、髪の数、髪の太さ共に4~5倍の改善がみられてます。
*医薬品等の有効性や安全性を確かめる試験では、実薬を使う人たちと、ウソの薬(ただの水)をそれと知らせずに使わせる人たちとを比較します。これは水でも本物の育毛剤と信じると効果が出る=プラセボ効果があるため、それを超えないと、成分に育毛効果ありと認められないからです。
ミノキシジルの副作用
女性向け育毛剤の副作用データによると、副作用発現率は、13.6%で、主なものは、「刺激感、接触性皮膚炎等の皮膚症状であり、いずれも軽度又は中等度なもの」ということでした。
プラセボ(水)の副作用(12.1%)と比べてもほとんど率が変わりません*ので、相当安全という事です。
投与群 | 副作用※ | |||
---|---|---|---|---|
関連あり | 関連ない ともいえない |
多分関連なし | 関連不明 | |
リアップレディ | 19例(13.6%) | |||
6例(4.3%) | 3例(2.1%) | 10例(7.1%) | 0例 | |
プラセボ | 17例(12.1%) | |||
3例(2.1%) | 8例(5.7%) | 6例(4.3%) | 0例 |
*水でも育毛剤だと思って塗布すると、頭がかゆくなったり、実際に皮膚が赤くなったりします(副作用にもプラセボ効果があります)。
ミノキシジルの分類
育毛剤の法律上の分類には、下図のように、医薬品、医薬部外品、化粧品の3つがあり、さらに「医薬品」には、医師の処方箋の必要な医療用医薬品と、ドラッグでも買える一般用医薬品があります。
ミノキシジルは、「一般用医薬品」の中の「第1種医薬品」とされています。
ミノキシジルを使った育毛剤
男性向けでは、大正製薬のリアップ以外にも、リアップのジェネリックとしてアンファーのスカルプDメディカルミノキ5、ロート製薬のリグロEX5があります。
なお、リアップX5プラス、ミノキ5、リグロEX5のミノキシジル濃度、容量は全く同じで、価格が違うだけです。
リアップX5プラス | ミノキ5 | リグロEX5 |
7,611円 | 7,800円 | 7,560円 |
女性向けは、リアップ リジェンヌだけです。
なお、男性向けとの違いはミノキシジル濃度で、男性の「X5プラス」が5%に対して、リジェンヌは1%です。
販売名 | リアップリジェンヌ |
---|---|
種別 | 第1類医薬品 |
包装 | 60mL |
価格(税抜) | 5,239円 |
おすすめ第2位:アデノシン
2017年に改訂された最新の日本皮膚科学会のガイドラインで男性の薄毛治療では推奨度が前回のC1からBに上がったのが資生堂の開発したアデノシンという成分です。
と言っても厚生労働省から「医薬部外品」成分として承認されたのが2004年ですから発売されてから10年以上も経って評価が上がったんですね
ちなみに、女性の薄毛治療での推奨度はC1。
「効くかどうかは根拠は薄いけど害はないから使っても良いんじゃない」くらいの消極的な推奨度です。
実際の皮膚科学会ガイドラインの推奨文
「アデノシンの発毛効果に関しては、男性に対する有効性を示す十分な根拠があるため、外用療法を行うよう勧める。一方、女性に対する有効性を示す根拠はまだ不足しているが、副作用が軽微な点や女性用の製品が販売されている点も考慮し、外用療法を行ってもよいことにする」
アデノシンの効果
51名の男性を対象とした臨床試験では、41名(80.4%)の人に薄毛に改善がありました。
また、別の2つの試験では、アデノシンを使う事で軟毛が減りました。「軟毛」とは髪の毛が細く、短くなる、薄毛の典型的な症状の事です。
一方、女性に対する効果では、13 名中 11 名(85%)で太毛率が高まり、その割合は偽薬群の 14 名中 5 名(36%)よりも高かった、という試験結果があります。
ただ、これ1件しかないので女性に対する効果証明は不十分とされてます。
アデノシンの副作用
開示されていませんが、育毛剤につきものの、皮膚症状(かゆみ、赤み等)はあると思われます。
アデノシンの分類
医薬部外品です。
アデノシンを使った育毛剤
資生堂が出しているもので最も力を入れているのがアデノゲンですね。
男性ものの名前は「薬用アデノゲンEX」。女性ものは「薬用アデノゲン グレイシイ」と言う名前です。
アデノゲンEX | グレイシィ | |
容量 | 300ml(2ヵ月分) | 150ml(1か月分) |
価格 | 8,500円前後 | 5,500円前後 |
おすすめ第三位:カルプロニウム塩化物
ガイドラインで推奨度Bの次の「C1」とされたのが「カルプロニウム塩化物」という育毛成分です。
これは、1968年にフロジンとして薄毛治療薬として発売された成分で1973年には「カロヤン」として一般向けにも発売されました。
まあ、育毛成分としては老舗中の老舗成分ですね。それだけに、治療実績は豊富。
なんですが、試験での効果の実証が不十分としてガイドラインでは推奨度はC1とあまり推奨度は高くありません。
なお、これも女性が使うことはできますが、女性用に作られた市販品はありません。
なので、お買い求めの際は、男物っぽくないか「ニオイ(香り?)」のチェックを忘れずに 🙂
実際の日本皮膚科学会の推奨文
「カルプロニウム塩化物の外用での有用性は、現段階では十分に実証されていない。しかし、5%カルプロニウム塩化物は長年にわたり保険適応となっており、生薬との合剤を含むわが国での膨大な診療実績を考慮し、行ってもよいことにする。」
カルプロニウム塩化物の効果
臨床試験では9割近い効果が確認されました。
カルプロニウム塩化物の副作用
副作用発現率は3.6%。主なものは、他の育毛剤と一緒で皮膚症状です。
カルプロニウム塩化物の分類
一般用医薬品の第三種医薬品です。
カロヤンは医薬品なのにガイドラインでは推奨度がC1。一方、アデノシンは医薬部外品でも推奨度B。
役所と医師の判断の違いが良く表れてますね。
カルプロニウム塩化物を使った育毛剤
カロヤンプログレ、アポジカが有名ですね。
プログレEX O | プログレO | |
1本容量(1か月分) | 120ml | 120ml |
価格 | 3,500円前後 | 2,900円前後 |
日本皮膚科学会ガイドラインの限界
と思う方もいるかもしれませんが、そういうわけではありません。
まず、日本皮膚科学会のガイドラインで推奨度を検証された育毛剤はほんの一部で、どのような基準で選ばれたのかは判然としません。
また、ガイドラインの基準である「証明度」も、とどのつまり「どれだけ効果を証明するデータがそろっているか」という「文献の量」に依存しています。
つまり文献としてきっちりデータ化されていないと、どれだけ治療現場で効果があるとされていても推奨されないんです。
典型的な例が、ほとんどの薄毛治療専門病院(AGAクリニック)では標準的な治療として高い効果が確認されている「成長因子導入」(メソセラピー)やミノキシジルの内服(通称”ミノタブ”)です。
これらの治療は、ガイドラインでは、有効性・安全性を確認した文献がないとして、それぞれの評価は「C2」と「D」として推奨されていませんが、9割以上の効果があることは各AGAクリニックが発表している通りです(医学文献として発表していないんでしょうね)。
これら以外にも、薄毛治療の最前線では、新しい治療として効果を上げているものがいくつもあり、中には、ガイドラインでは取り上げられていない育毛成分を使った治療もあります。
そういう意味では、ガイドラインで推奨度の高い育毛剤は、どちらかと言うと昔からある歴史のある育毛剤で大企業が開発したものに限られてしまう傾向があります(例:カルプロニウム塩化物の発売は50年以上前!)。
ですので、一通り市販の育毛剤を試してみて「効果がなさそう」という場合、そうした新成分の入った育毛剤を試してみるのも手です。
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(参考資料)
- 日本皮膚科学会のガイドライン
- アメリカの国立医学図書館PubMed
- Medicine
- 医薬中央雑誌Web
- Cochrane Library