2020年に日本に上陸したばかりのバイキャピルとかいう成分。
この成分を主成分とした育毛剤も出てきていますが、どれほど効果があるのでしょうか？
そこで、
- ①臨床試験（人での実験）の医学文献があるか？
- ②実際に治療で使われているか？（日本、海外）
という視点で鑑定してみました。
鑑定結果
★★☆星2つ
日本ではまだですが、海外では病院での薄毛治療にも使われている、意外とまともな成分でした。
| 判定基準 | 判定 |
| 臨床試験の文献があるか？ | 〇 |
| 日本で治療に使われているか？ | × |
| 海外で治療に使われているか？ | 〇 |
医学文献
世界中の医学文献を集めたNational Library of Medicineというサイトを始め、様々な医学データベースから、Googleまで、「baicapil」で検索をかけた所いくつか文献が見つかりました。
A Study to Evaluate the Efficacy of Baicapil Formulations in Treatment of Telogen Effluvium
後で内容を紹介しますが、この時点で、何の根拠もない効果をうたっているインチキ成分ではないことが判明しました。
日本の病院での使用
20ヵ所以上のAGAクリニックに覆面調査をしたのを始め、検索エンジンでも調査しましたが、日本では、バイキャピルを使っている病院を見つける事はできませんでした。
海外での使用
海外ではインドの「Belagavi Institute of Medical Sciences」という所で使われており、臨床試験も行われています。
バイキャピルとは？
スペインのProvital Group社の開発した植物性成分。その主原料は、コガネバナと大豆と小麦の芽のエキスです。
コガネバナとは？
アジア起源の花で、伝統的に漢方薬として使われてきた植物。活性分子であるフラボンのバイカリン（バイキャピルの語源）を含み、幹細胞の活性化、抗酸化作用、老化予防の効果があると考えられています。
大豆と小麦の芽のエキスとは？
大豆と小麦の種から得られるエキスで、細胞の代謝活性を高めたり、細胞増殖を促します。
バイキャピルの効果は？（試験管での試験）
コガネバナの幹細胞活性化作用
下の実験では、コガネバナに含まれるバイカリンが線維芽細胞のTERTの活性を高めたことを示しました。
なお、線維芽細胞と言うのはいわゆる幹細胞の一つで、TERTというのは幹細胞の活性化のために必須の酵素です。
バイカリン老化遅延作用
バイカリンで培養した線維芽細胞の細胞分裂が平均5回増加させました。
これは10年分の細胞分裂数に当たります。
大豆と小麦の芽に細胞活性化作用
細胞活性の指標として線維芽細胞のミトコンドリアの活性を計る実験をしました。
その結果、芽のエキスの濃度が増えるにつれミトコンドリアの活性が高まることが証明されています。
感想
効果もさることながら、試験管レベルの実験とはいえ、主要成分それぞれの作用をここまできっちり証明した成分は見たことがないかも。
そういう意味では、信頼できそうな印象を持ちました。
バイキャピルの効果は？（人体での試験）
試験管レベルで効果が証明されても、実際に使ってみて効果が出なければ意味がありません。
ということで、人を使った臨床試験も実施しています。
試験方法
バイキャピル3％を配合したローションを使用するグループ31人と、プラセボ（ただのアルコール水）を使うグループ30人に分け、各グループ6か月間塗布した後に使用前と比べ、どれくらい髪が増えたのか、計測した。
対象者
- 18才～60歳
- 男女
- 地中海系、コーカサス系の白人
試験結果
この臨床試験では色々な指標で結果を測定しています。
成長期と休止期の毛髪の比率
77.4%の人で、成長期の毛髪を増やし、休止期の毛髪を減らす作用が確認されました。
その平均値ですが、180日間の塗布で、成長期の毛を12.7％増やし、休止期の毛を27.2%減らしました。
ちなみに、一般に髪の毛は、成長期と休止期を繰り返していますが、薄毛の人は成長期の毛髪が少なく、休止期の毛髪が多くなっています。
また、上記の結果を、（成長期の毛髪数）を（休止期の毛髪数）で割った値＝A/T値（これは多ければ多いほど成長期の髪の毛が多いということになるんですが）、正常時の値である4の1.5倍（＝5.9）にまで増やしています。
髪の密度
髪の密度をどれくらい増やしたかという視点でも効果を計測しています。
180日間塗布の結果は、90.3%の人で髪の密度が増え、その増加率は平均して18%でした。
ちなみに、プラセボ（棒グラフ左のPLACEBO）、つまり「ただのアルコール水」でも髪の毛が増えるのかと不思議に思われるかもしれませんが、人間はただの小麦粉でも「血圧を下げる薬だよ」と言われて飲まされると実際に血圧が下がります。これを「プラセボ効果」と呼びます。
なので、このプラセボよりも高い効果があることを示すことがあらゆる薬剤の成分を評価する時に大事な指標となっています。
で、18％ってどれくらい増えるかと言うとこんな感じです。
確かに、若干ではありますが180日後の写真の方が密度がありますね。
抜け毛抑制効果
今度は「抜け毛をどれだけ減らしたか？」に関して、「洗髪」と「髪をとかした時」どれくらい抜け毛があるかを計測しました。
その結果、試験開始後90日後（3か月後）の時点で、96.8%の人で抜け毛が減り、その減少率は平均で60%に達しました。
発毛効果
バイキャピル使用グループの使用前・使用後の「新しく生えた」毛髪の数を測定しました。
結果、使用前は新しい髪の毛の平均本数は、12,500本だったのに対し、使用後は38,000本になったとか。
人間の頭髪の数は、約10万本と言われているので、使用前は1割強だった新毛の割合が4割近くにまで増えていることになります
これが本当なら（本当なのでしょうが）、スゴい、発毛促進効果です。
まとめ
- 試験管での試験で、バイキャピルの3原料（コガネバナ、大豆の芽、小麦の芽）の効果が証明された。
- バイキャピル3％ローションによる、増毛効果、発毛効果、抜け毛抑制効果が証明された。
ということで、バイキャピルは一応、効果の証明された成分と言えます。
この成分を使った商品
日本ではまだ1つだけのようです。
アングレ
そもそもこの育毛剤からバイキャピルの存在を知りました。
これは、4本使って効果がなければ、
- もう市販の薄毛ケアでは無理です
- だからAGA病院に行ってください
- その治療費を出します
という変？というか強気な育毛剤です。
お値段は、定価は税込7,980円、定期購入価格は5,980円。
Amazonだと5,990円です。
興味があればどうぞ。
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以上です。
（参考資料）
- 日本皮膚科学会のガイドライン
- アメリカの国立医学図書館PubMed
- Medicine
- 医薬中央雑誌Web
- Cochrane Library