- 最近、髪が薄くなり始めてきたので、とりあえず、市販の育毛剤で、安くて効果のあるものはないかと探している。
- アマゾンや楽天市場で育毛剤の売上ランキング上位のもので、安いのを選べばいいかなあと思ってるけど、本当に効果があるのかチョイ疑問。
- だって、人気なのは、効果があるからというより、宣伝がうまくいったからじゃないかと思われる育毛剤もあるし。
- かといって、アマゾンや楽天のレビューも業者の「自作自演」が多いので、信用していいものやら・・・。
そんな方のために、10年以上インチキ育毛剤にダマされてきた失敗経験(?)を駆使し、アマゾンや楽天市場の人気ランキングで常連の「3,000円以下」の育毛剤の効果を、純粋に医学的な観点から「鑑定」してみました。
今回取り上げるのは、4商品。
- 花王サクセス薬用育毛トニック
- HMENZメンズ育毛剤
- スカルプD薬用育毛トニック スカルプジェット
- 資生堂アデノバイタル スカルプエッセンスV
当記事の育毛剤鑑定基準
その商品を使った人の商品レビュー、売上ランキング、体験談といった、いくらでも操作できちゃう、本当なのかウソなのか分からない情報は一切無視しています。
代わりに重視しているのは「成分」。
当たり前ですが、いい成分を使っていれば、安かろうが、作ってるメーカーが聞いた事もない所であろうが、効果があるはず!
その成分の良し悪しの判断基準は、「実際に人で使用試験をして育毛・発毛効果を証明しているか?」を基準としています。
「試験管レベルで効果を証明した」といった「実際使ったらどうよ?」みたいなのはカウントしてません。
それでは、いってみましょう!
花王サクセス薬用育毛トニックは効果ある?
花王の男性用ヘアケア製品ブランド「サクセス」の育毛剤のヒット商品。
街のドラッグでは900円台で売ってたりもする、非常にリーズナブルな育毛剤です。
その成分は次の通り。まあ、たくさんあります。
これらを、アメリカの国立医学図書館PubMed、Medicineといった世界的な医学文献データベースや、Googleで検索したところ、「トランス-3,4’-ジメチル-3-ヒドロキシフラバノン」、通称T-フラバノンの効果を示す臨床試験の文献が見つかりました。
また、花王のホームページを見ると、これ以外にも、T-フラバノンを含む育毛剤の男性、女性での臨床試験の結果が見つかりました。
T-フラバノンの育毛効果は?
T-フラバノンは、花王の開発した合成化合物で、元々、日本古来の生薬である西洋オトギリソウの毛母細胞増殖作用に着眼して開発された成分です。
その試験結果がこれです。
男性の薄毛に対する効果
男性の被験者197名による30週間の使用試験では、t-フラバノンを使用した場合に、成長期の髪の数が増加し、髪が太くなる傾向がありました。また、男性の被験者8名による6カ月間の使用試験では、t-フラバノンを使用した場合に、洗髪時の抜け毛の数が減少する傾向がありました。
効果はあったみたいですね。でも試験の詳細(誰にどのように試験して有効率はどれくらいだったか?)が分かりませんね。
女性の薄毛に対する効果
女性の被験者による6カ月の使用試験では、t-フラバノンを使用すると、髪が太く、本数が増える傾向がありました。その結果、女性の薄毛にみられる、髪の分け目の目立ちが緩和されることがわかりました。
女性にも効果があったみたいですが、こちらは被験者数も分かりません。
結論!
男性・女性共に効果が確認されているようです。
とはいえ、対象者の属性や有効率と言った詳細が分からないので、他の育毛剤と比べて効果が高いのかどうかはハッキリしません。
ただ、自社で臨床試験をちゃんとやってて、公表もしているという点で、しっかりした会社の(当たり前か 😛 )育毛剤という印象を受けました。
HMENZメンズ育毛剤は効果ある?
販売元は鶴西株式会社という健康食品や化粧品を扱っている会社、製造元はミリオナ化粧品という化粧品メーカー。
どちらも耳慣れない会社ですが、HMENZ(メンズ)育毛剤はアマゾンや楽天市場では売り上げ上位にランクインするヒット商品です。
肝心の価格は、1本(1か月分)で定価は4,580円ですが、実売価は2,980円でした(2019年1月時点)。
この育毛剤の効果を調べようと、先ほど同様、含有成分をPubMed等の医学文献データベースやGoogleで検索をかけた所、臨床試験の文献が見つかったのは、センブリエキスに含まれる「オレアノール酸」だけでした。
オレアノール酸の効果は?
オレアノール酸配合育毛剤 (センブリ抽出液OA22.5%を含有する70%エタノール溶液)を50歳以下の男性型脱毛症14例に4カ月間投与したところ、硬毛の数が増えたそうです。
「臨床判定」では3例が有効とされました。つまり、医師から見て医学的に効果ありと言える症例が14例中3例だったという事と思われます。
結論!
HMENZメンズ育毛剤は、含有成分であるセンブリエキス等が医薬部外品成分ですから、ある程度、効果はあると思います。
ただ、多くの育毛剤が配合していて、比較的一般的な育毛成分ですので、その他大勢の医薬部外品の育毛剤と同程度の効果でしょう。
スカルプD薬用育毛トニック スカルプジェットは効果ある?
昔は雨上がり決死隊の宮迫さんをはじめ薄毛の吉本芸人が宣伝していて有名になったスカルプDのヒット商品。
いまだに人気の育毛剤として必ず上位に顔を出していますね。
これもお手頃価格で、1か月分持つボトル1本で通常は3,100円前後ですが、特売になると3千円を切る価格になります。
この育毛剤の成分も山ほどあるんですが、アメリカの国立医学図書館のデータベースPubMedを始め、Medicine等医学文献のデータベースで臨床試験の文献の見つかった成分は一つもありませんでした。
ただし、酢酸-DL-α-トコフェロール、グリチルリチン酸2K、タマサキツヅラフジアルカロイドの3つは、日本では「医薬部外品成分」として国に指定されていますので、一応、効果の裏付けがあるものとします。
では、この3つの成分は、それぞれ、どれくらい育毛・発毛効果を見込めそうなのでしょうか?その基本作用から効果のほどを類推してみます。
酢酸-DL-α-トコフェロール
ビタミンEの誘導体で、化粧品や食品によく使われています。育毛剤でも使われることの多い成分です。
その効果は、一般的には抗酸化作用や血行改善が言われています。
当育毛剤のホームページでも「血行促進」をうたっていますので、それにより「毛根に十分な栄養分が届くので毛が良く育つ」といった作用が期待できるって事でしょうか。
とはいえ、そこら中で使われている成分ですので、あまり高い効果を期待しすぎても・・・ということでしょう。
グリチルリチン酸2K
炎症を抑える作用を持つことで知られた成分で、育毛剤に限らず歯磨き粉や化粧品など広く使われています。
これも、まあ、非常に多くの商品で使われているで、酢酸トコフェロール同様、効果は平均的でしょう。
タマサキツヅラフジアルカロイド
昔から民間薬として知られている植物由来の成分で、医薬品の世界では「セファランチン」という名前で知られています。
その効果はというと、2010年の日本皮膚科学会の診療ガイドラインでは、効果の裏付けとなるデータがほぼないということで、薄毛治療には「用いない方がよい」としています。
結論!
医薬部外品の育毛剤として標準的な効果は期待できるはず。
でも劇的に効くかというと???
アデノバイタル スカルプエッセンスVは効果ある?
資生堂が開発したアデノシンを含む育毛剤の一番安い商品がアデノバイタルです。
この育毛剤の成分を医学データベースで検索した所、引っかかったのが「アデノシン」という成分です。
アデノシンの効果は?
実はアデノシンは2017年の最新の日本皮膚科学会の男性型・女性型脱毛症診療ガイドラインで推奨度Bとして高く評価されています。
まずは男性の薄毛患者を対象とした臨床試験結果を紹介します。
臨床試験1
ここでは、髪の毛の太さ、軟毛率(細く短い髪の毛の割合)で効果が認められました。
0.75%アデノシン配合ローションを用いた、101 名の男性被験者を対象とした観察期間 6 カ月間のランダム化比較試験において、毛髪径・軟毛率・太毛率の中等度改善以上の改善率は、アデノシン配合ローション群は51名中41名(80.4%)、対照群は 50 名中 16 名(32.0%)であった。
臨床試験2
この試験では頭髪の密度、つまりボリュームでも効果が確認されました。
0.75%アデノシン配合ローションを用いた、38 名の男性被験者を対象とした観察期間 6 カ月間のランダム化比較試験において、アデノシン配合ローション群では対照群と比較して、毛髪径 40 μm 未満の軟毛率が有意に減少、毛髪径 60 μm 以上の太毛率が有意に増加(P<0.0001)、さらには頭髪の密度も有意に増加していた。
臨床試験3
この試験では、薄毛治療薬として世界的に使われているミノキシジルと同等の効果があると結論付けています。
0.75%アデノシン配合ローションと5%ミノキシジルローションを用いた、94 名の男性被験者を対象とした観察期間 6 カ月間のランダム化比較試験において、病変部の太毛率は両剤群で有意差なく、0.75%アデノシン配合ローションは男性型脱毛症の治療薬として市販されている 5%ミノキシジルローションと同等の有用性があることが示唆された。
こうした試験結果をもとに、日本皮膚科学会のガイドラインでは、アデノシンを男性向けには推奨度Bとしました(ちなみにミノキシジルは推奨度A)。
一方、女性での効果に関しては、次の試験を紹介しています。
0.75%アデノシン配合ローションを用いた、30 名の女性被験者を対象とした観察期間 12 カ月間のランダム化比較試験において、成長期毛伸長率と太毛率は、アデノシン含有ローション群で軽度改善以上が 13 名中 11 名(85%)であり、プラセボ群の 14 名中 5 名(36%)に比較して有意に改善度が増加していた.成長期毛伸長率と毛髪径 80 μm以上の太毛率は、使用 6 カ月後、12 カ月後の時点で、アデノシン含有ローション群で有意に増加していた。
しかし、日本皮膚科学会のガイドラインでは女性向けではデータが不足しているとして推奨度をC1として落しています。
結論!
効果があると証明した臨床試験数では他の3育毛剤よりも多く、信頼できそうです。
なお、この育毛剤は1本で3千円チョイするので、「3千円以下じゃないじゃないか!」と思われる方もいるかもしれませんが、1本で1ヵ月以上持つため「1か月分のコストは3千円以下に収まる」として今回対象に含めました。
まとめ
ご紹介した4つの育毛剤の特長をまとめてみました。
1本価格* | 薬機法分類 | 効果証明度 | |
サクセス | 1,000円前後 | 医薬部外品 | ○ |
HMENZメンズ | 2,980円 | 医薬部外品 | ○ |
スカルプD | 特売で3千円以下 | 医薬部外品 | ○ |
アデノバイタル | 3,200円前後 | 医薬部外品 | ◎ |
*2019年2月時点の価格
(参考資料)
- 日本皮膚科学会のガイドライン
- アメリカの国立医学図書館PubMed
- Medicine
- 医薬中央雑誌Web
- Cochrane Library